−デビューからヒットまでの道筋をどのように描きましたか?

中脇:中田君ともよく話していますが「あるターゲットを狙いたいなら、そこを直接狙うよりも、彼らがあこがれるトレンドリーダーたちに認められるものを作れば、その層に続くマスにも広がるということです。」
カエラ効果が始まる前は、「トレンドリーダー/マス」は「宇多丸・掟ポルシェ/アイドルオタ」だったということが興味深い。

松任谷:だから、曲とか詞を書くっていうのは、もう生活、生理、一緒だから、食事したり歩いたりすることと。言われる前から書いてるのよ、人が止めようと、勧めようが、勧めまいが。自分の欲求として、もう幼い頃から作っちゃっている。 もちろん、ある日突然、書きたくなって、自分で書いたものを、自分の言葉を歌いたくなって、ひらめいちゃって、ってことはあるかもしれないけど、書いて歌うようになりたいんです、って言っているようだったら、書かない方がいいと思う。

だって、同じだよそれは、人が作ってきたものでも。(あややの)ためを思って作ってきてくれたんだから、あややはこうだ、って。それを表現できることの方がスゴイと思うね。

松浦:ほぉー、そういうふうに考えたことなかったです。

松任谷:別に、人が作ったものでも、自分のでも関係ないと思う、私は。で、その吸引力を持つことが大事だと思う。 なんかこんなピッタリのものができちゃったっていう、それはひとえに人徳だったりするわけだから。いや、もちろん、ほんとにある時ね、どうしても書きたくなって、ということがあれば別なんだけれど、フォーマットとして求めない方がいいと思うよ。


中田:僕は新しい楽器を、テクノロジーを、音を、そんな風に「なじませる側」にまわりたいんです。最初にピアノをなじませた誰かのように。 ただし、「別のこと」を「増やす」ためには、キャッチーでなければダメですよね。つまりより多くのひとの心をつかむような説得力がなければ増えていかない。「今まで興味なかったような世界のものだけど、これは面白い」そんな風に、聴き手に積極的に選んでもらってはじめて認知される、つまりなじんでいく。だからキャッチーな音楽を創ろう、と思いました。

あ、でもね。キャッチーであろう、というのと、ポップであるというのは違うと思っています。ポップというのはそれまで大衆が受け入れていなかったものを、誰かが広めてポップにした、ということですから。キャッチーというのは、どんな少数派の種類のものでもそのきっかけを作り出すパワーということです。

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